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【プレスリリース】健康診断で様々な心臓病の検出を可能に、新たなAIモデルに関する研究契約を締結

スーパーコンピュータによる心臓シミュレーションとAIを組み合わせた世界初の健診サービス

ジャパンメディカルデバイス株式会社(本社:神奈川県川崎市、代表取締役:岡野貴史、千葉修一、以下JMD)は、株式会社UT-Heart研究所(本社:東京都世⽥⾕区、代表取締役:久⽥俊明、以下UTH研)との共同研究契約を締結しました。
 本研究では、⽇本が世界に誇るスーパーコンピュータ「富岳」の計算パワーをフルに活⽤し、健康診断での⼼電図データを基に、様々な⼼臓病を早期発⾒する新たなAIモデルを開発します。

 心臓病はますます健康保持の上で重要な関⼼事になっています。⼼不全の罹患者数は全国で約120万⼈、2030 年には130 万⼈に達すると推計されています。※1    またWHO世界保健機関の調査では、2019年には虚⾎性心疾患が死因の第⼀位になっています。※2

 ⼼臓病は罹患時のQOLダメージが⼤きいにもかかわらず、リスクを実感しにくい疾患といえます。特に、⼼不全は徐々に進⾏し、進むごとに対応が難しくなることから、早期発⾒が重要ですが、自覚症状がすくなく進⾏するまで医師の診断になかなか結び付きません。

 一方、20歳以上の国民で健康診断または⼈間ドックを受診している⼈の割合は64.3%以上と報告されています。※3 そこで、健康診断において幅広く網をかけることが、罹患者数を減らす有力な方法になります。

 現在、健康診断では、手間のかからない心電図検査が主となっています。この心電図検査データだけから、⼼臓シミュレーション技術とAIを組み合わせて、心不全早期発見のPrecision Medicine(⾼精度医療)を実現することが今回の研究開発の⽬的です。

■開発内容について

 JMDは、UTH研と共に、心臓シミュレーション技術に基づきスーパーコンピュータ「富岳」を用いて構築された膨大な「仮想の」心疾患データベースの中から、検査を受けた各人の心電図に最も近い心電図を描く仮想心臓を抽出するAI技術を開発します。

 一般に、心電図波形に見られる特徴的な変化は、心臓のミクロ(分子)からマクロ(臓器・人体)までの各レベルに含まれる多数の生理学的パラメータの組み合わせにより形成されます。これらのパラメータは「仮想の」心疾患データべースの各心臓ごとに既知であることから、心電図の特徴が一致する仮想心臓を抽出することにより、従来の検査では分からない各人についてのパラメータの状態が推定できることになります。

 一方、どのようなパラメータの状態が心不全の初期に出現するかは、東京大学医学部附属病院とUTH研の共同研究により特定されつつあります。両パラメータの状態を比較することにより、個人の心不全リスクの精密診断、早期発見が可能となることが期待されます。なお、心疾患データベースには既に約3万パターンの仮想心臓が蓄積されていますが、今後より広範なバリエーションをカバーできるよう倍増される予定です。

 現在、実臨床データの学習によるAIの研究が盛んに行われていますが、よく知られるようにAIではなぜそのような結論が得られたかを説明することは難しく、できたとしても扱われたデータ上での表面的、統計的な説明に留まります。

 これに対し私たちは、簡便な心電図検査データのみを用いるにも拘わらず、その背後にある各種パラメータ分布を個人ごとに推定し精密診断を行うことで、心不全の原因因子の異常を早期にキャッチする世界初の健診サービスを目指します。 

■市場規模について

 現在の日本国内において、健診・人間ドックを受診している方は約60%に上り、その市場規模は約9,000億円と試算されています。健診・人間ドックには、オプション検査が多数あります。例えばCEA(腫瘍マーカー)は、約40%の方が受診しており、その費用は1回数千円~1万円程度です。※4

 心臓病は三大成人病の一つで幅広い方が関心を持っていること、また、本サービスは通常の健診・人間ドックの検査データのみで診断可能であり、受診者の⽅に負担をかけることもなく、もちろん侵襲性もないなど、敷居が低いにもかかわらず、⼼臓病リスクについて詳細な情報を提供しますので、より高い受診率が見込まれます。

 超⾼齢化にすすむ我が国において、特に⾼齢になるに従いリスクの⾼まる心臓病の早期検出に対するニーズは今後ますます高まると思われます。

■⽇程・ステップ

 試験運用開始は2024年4月を予定しており、その後1年間の検証を経て、2025年4⽉にサービスの本格展開を予定しています。

■「富岳」による成果を用いた社会貢献

 既に、文部科学省「スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム」(課題番号hp220178)の成果としてUTH研により「仮想の」⼼疾患データベースが無償公開(※5)されていますが、さらにその一環(JPMXP1020230120、課題番号hp230216)としてJMDはデータアクセス⽤API(Application Programming Interface)を開発・実装し、無償のデータサービスとして包括的に運用する予定です。

 このようなプラットフォームの提供により、⼤学・病院等における各種心臓病研究を支援し、我が国の健康長寿社会の実現へ向けて貢献します。

■知的財産権

「仮想の」心疾患データベースの活用方法については、UTH研よりPCT国際出願済(PCT/JP2022/032302)、日本登録済(特許第7266349号)であり、利用する権利を当社が保有しています。

■共同研究契約内容

  •  研究題目
    富岳等によるHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)を活用した心臓シミュレーションの実用化研究及び研究成果の事業化
  • 研究目的HPCを活用した心臓シミュレーションにより医療の発展に寄与すると共に最先端技術を発信することで企業の社会的プレゼンスを高める
  • 研究内容
    心臓シミュレータを活用した以下3つの技術を開発し、事業化を図る
    • インシリコ心疾患データベースを活用した個別心不全リスク予測
    • 心毒性評価システム
    • 分子シミュレーションとの融合
  • 研究分担
    • UTH    心臓シミュレータ及びインシリコ心疾患データベースの研究開発
    • JMD    AI、HPC関連領域を中心としたUTHとの技術的協同、データベース運用、ならびに事業化
  • 研究期間        2022年10月1日から2026年3月31日まで

■ジャパンメディカルデバイス株式会社(JMD)について

 JMDは、東京⼤学が20年以上の年数をかけて、理化学研究所のスーパーコンピュータ上で作り上げた⼼臓シミュレータ(UT-Heart)を活⽤した新たな医療機器として、コンピュータシミュレーションサービスを研究開発し、提供する会社です。

 本⼼臓シミュレータは、CTや超⾳波画像を含む臨床データをインプットデータとし、スーパーコンピュータの演算能⼒を活⽤して、分⼦レベルの電気的・⼒学的挙動に基づき個⼈の⼼臓の動きを忠実に細部まで再現できる世界最⾼峰のテクノロジーです。 このような精密な医療シミュレーションには、医学的知⾒を⼯学的に表現し、最新のコンピュータを駆使し最⾼速で計算するための最先端のスキルとノウハウが必要です。

 JMDは、これらの計算機科学の一流技術者に加えてAI開発技術者も擁し、シミュレーションモデル作成のための医療データ処理およびシミュレーション結果の可視化(プレ・ポスト処理)を含めたサービスを構築し提供すべく、国内最⾼峰の研究機関・実証機関と連携し開発を進めております。

 JMDは、Precision Medicine(⾼精度医療)を実現へ向け、世界で最も多い死因である⼼臓病の早期発見のための健診サービスや高度な診断・治療⽀援を⾏うコンピュータシミュレーションサービスを提供することで、多数の命を救い、全⼈類のQOL(Quality Of Life)向上に寄与します。

 ホームページ https://jmd-corp.com/

■株式会社UT-Heart研究所(UTH研)について

 UTH研は、2002年から東京大学新領域創成科学研究科において集中的に開発されてきた心臓シミュレータUT-Heartの研究成果をさらに深化・活用するため、東京大学発ベンチャーとして2013年10月に設立されました。

 医学、計算科学の基礎研究から臨床研究、創薬・各種医療機器開発におけるシミュレーション研究までを幅広く行っている国際的にも卓越した民間高等研究所です。

 ホームページ http://ut-heart.com/jp/index.html

■註

■プロフィール

  • 社名             : ジャパンメディカルデバイス株式会社(Japan Medical Device Corporation)
  • 設⽴             : 2020年(令和2年)11⽉16⽇
  • 所在地          : 〒210-0024 神奈川県川崎市川崎区⽇進町7番地1 川崎⽇進町ビルディング
  • 代表者          : 岡野 貴史(代表取締役CEO)、千葉 修⼀(代表取締役CTO)
  • 事業内容       : ⼼臓シミュレータ(UT-Heart)を活⽤した新たな医療機器コンピュータシミュレーションサービスの研究開発
  • ホームページ : https://jmd-corp.com/

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